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推しとか本命とか担当とか、そんなんじゃ言い表せない

1/22 乱歩をテレビドラマにする方法:NHK『探偵ロマンス』制作秘話

1/22 乱歩をテレビドラマにする方法:NHK『探偵ロマンス』制作秘話


登壇者(敬称略)

演出:安達もじり

デザイナー:瀨木文

制作統括:櫻井賢

演出・企画:大嶋慧

編集:佐藤秀

 

※途中から参加かつメモの文字起こしなのであやふやな部分あるかと思います。何卒。

 

 

☆探偵ロマンスが出来るまで

活劇を作りたいということ。

岩井三郎という実在する私立探偵を元に作品を作りたいと調べていくうちに江戸川乱歩が白井三郎の探偵事務所の門を叩いていたということを知った。

この事実から妄想して、乱歩が作品を執筆する裏で、乱歩が探偵業に励んでいたら…?がこの作品に繋がった。


☆探偵ロマンスというドラマを通じて伝えたいこと

このドラマで描きたいのは、格差社会の中でもがく若者の叫び、若者の燻り

グリ下やトー横に集まる若者たちをイメージして表現。

探偵ロマンスの時代も、浅草にギャング団があり、良いところの坊ちゃん嬢ちゃんが集っていた。

そういった若者の閉塞感が、現代にも通じると思った。

実際に制作チームでグリ下へ視察に行った。

金持ち/貧乏人を分かりやすく描くことで、ヒエラルキーの生む哀愁を表現している。徹底的に格差社会を描くことで、その殻を破るサマを届ける。

一方で、世の中そんなに綺麗事ではないよね、という部分もある。


☆作り込みについて

スラム街の作り込み

役者さんへの汚しや、魚をみんなで食べて骨を焼き切ったものを置いたり、とことん貧しさを描いている。

でも、貧しさの中の豊かさについても描きたい。

太郎の屑入れのかごの名札など、資料に基づいて美術さんに作ってもらった。

その他にも美術さんにこだわってもらって作り込みを行っても、実際には寄りのショットがなくて映らなかったりする。

実際には映らなくても作り込むことで、現場には臭いが漂っていて、その臭いは映らないけど、役者には感じ取れる。

ディテールを細かく作り込むことで、そこに役者に飛び込んできてもらう。

美術部は自分たちの作ったもので、どんな演技を見せてくれるんだという勝負をかけてるつもり。


映らないものに予算をかけるなと言われてしまうこともあるけど、現場を作り上げてそこで演技をしてもらう装置でもある。

そういったものを感じてもらうことが大事。


何度も「皆さんからいただいた大事な受信料なので!」と櫻井さんおっしゃっていた。笑。

☆アクションについて

アクションにも凄く拘っている。

かつての活劇を作りたく、「そろそろアクションを本格的にやってみたい!byもじりさん」ファブルなどのアクション監督を務めている横山誠さんをお呼びした。

実際に横山さんのスタジオでカット割に沿ったプランを作ってもらう。

第一話のアクションシーンは放送にして5分程度だが、実際は4日間かけて撮っている。

はじめ、100カット程度だったが最終的に140カットに(数字間違ってるかも)

以前、草刈さんとご一緒した経験から、空き時間にテニスなどをなさる姿を見て、アクションも行ける!とのことで、ご本人も快諾のもと、実際ほとんどのアクションシーンは草刈さんがやられている。

脅威の70代!


なお、太郎がピスケンに銃を突きつけられてるシーン、あのシーンは昼の設定だが、撮ったのは日暮れ。

照明チームの仕事により、屋外のシーンと繋がっている。

 

(追記)絵コンテなどがなく、もじりさんが台本に手書きで文章でカット割を書いているものをスライドで見せていただいたんだけど、とても緻密で凄かった。

もじりさんご本人は、絵が描けないから…とおっしゃっていたけど、台本のト書きやセリフごとに線を引いてカット割りを示していた。

潤二登場シーンの台本の描き込みなども見せていただけたのが嬉しい。

 


☆キャスティングのお話

その前に余談:質問されたのは年配の男性だったのだけど、櫻井さんが前のめって「もりも…」と何度か言いかけていたのが印象的でした。笑。

「ちなみにどなたが気になりますか?」とのことで、「菊之助さんや女性陣」とのことでした。

それ以降も、慎ちゃんのこと聞いて欲しそうというか場内のスト担と思しき我々に気を遣っていただいた気がした。

質問募る時も「なんでも良いですよ。森本慎太郎ってどんな男ですか?とか!」って言ってくださってた。

ただ、思いの外年配の方が多く、ちょっとオタク丸出しの質問しづらいなぁと私も遠慮してしまった…。

良い落とし所の質問が出来ず歯痒い(本当のピスケンについて北斗ですか?って聞きたかったけど、ネタバレだし無粋だからやめた)→北斗じゃなかった

 

濱田岳さん


9月クランクイン予定だったので、3ヶ月前の6月頃のタイミングで俳優に交渉

探偵ロマンスの企画自体が立ち上がったのは、カムカムが終わってすぐ。

その時点で、濱田岳さんには絶対に出ていただきたく、すぐに押さえた。


尾上菊之助さん

カムカムの撮影時は歌舞伎の休演日の撮影で乗り切れたものの、今回はそうもいかなかった。

それでも、役の意義を感じていた菊之助さんは、

東京 歌舞伎夜公演→その日のうちに京都入り→翌朝〜14時まで京都で撮影→帰京 夜歌舞伎公演

というスケジュールかつ、9月10月の休演日を全て探偵ロマンスにあててくれた。

なお、菊之助さん演じる住良木はこれから色々と色々するとのこと。

 

松本若菜さん

美摩子は白井三郎との年齢差も考えてミドルエイジで、かつとにかく綺麗な人、とにかく綺麗な人、松本若菜でしょう、と決まった。

ちなみに美摩子の設定は39歳となってた。

 

石橋静河さん

実際の江戸川乱歩である平井太郎さんと村山隆子さんとの夫婦関係はとてもユニークで、乱歩が人間的で自由な一方隆子さんはその乱歩を支える理知的で凛とした女性だった。

そういった点から、石橋静河さんの佇まいが隆子だとキャスティング。

この話の流れで、俳優のギャラの話に。

通常1本撮影するのに、俳優は1週間〜10日拘束される。

拘束時間に対してギャラは1本分になってしまう。

バラエティは1日2本撮りがザラなので、ドラマよりも割が良い。

ハリウッドのように映画1本出れば、1年仕事しなくても良いという風になるには、日本のコンテンツがもっと豊かにならないといけない。

探偵ロマンスは世界に通用するドラマを、と制作している。

 

別の方の質問で、「森本君や世古口君など若いキャストはどうキャスティングしたのですか?また裏話もあれば教えてください」

櫻井さん待ってましたとばかりに、我らが森本に饒舌でした。嬉しい。

 

我らが森本慎太郎

乱歩さんは1923年に30歳でデビューしていて、ドラマの設定は25歳くらい。

この探偵ロマンスは社会に飛び立とうとする若者の群像劇でもある。

潤二はマッチョな軍隊上がりの上昇志向というキャラクターで、合う俳優を探していた。

その頃、カムカムのご縁で北斗君からSixTONES大阪城ホールにカムカムチームを呼んでいただいた。

(本当にね、SixTONESは凄いですよ。北斗君に手振ってもらっちゃいました。と、嬉しそうな櫻井さん)

SixTONESのメンバーはジェシー君など知っているメンバーもいたけど、全員は知らなかった。

その中で森本慎太郎のキャラクターが鮮烈だった!

今風の線の細い子ではなく、潤二だ!と思った。

そのまま、これまでに慎ちゃんとお仕事をしたことのある脚本家坪田さんに連絡を取り、「潤二に森本君どうですか?」「良いと思います」と坪田さんもOK。

すぐに連絡したところ、やりますと言ってくれた。

 


裏話

読み合わせの日が初日で、錚々たるメンバーの中、とても緊張していた森本君。

読み合わせから台本を見ない草刈さんや、菊之助さんの台詞回し、また冒頭から草刈さんと濱田君との掛け合いに押されて、ますます緊張していたけど、声を張ったりとても頑張っていた。

実際に撮影が始まっても、とても緊張していたけど、細やかな濵田君が積極的に声をかけることで、どんどんリラックスしていった。

芝居の合間に「濱田岳すげぇっすね」と、芝居しながら見入ってしまったと話してくれた。

1話でもあった神戸税関のシーン(太郎が潤二に小説を見てもらうシーン)は後半に撮ったシーンなので、良い具合に肩の力が抜けていた。

 


世古口君

世古口君はもしかしたらまだご存知ない方もいらっしゃるかもしれないけど、凄い俳優さん。

まだ1話には出てこないので、あまりネタバレになることを言えないけど、今回の作品をきっかけに名が知れ渡ると思う。

すごく良い芝居をする。

大嶋さん:ゼンカイジャーを見ていて、後半にいくにしたがって芝居が深くなっていくのが印象的だった。

(まだ放送されていない役なのでエピソード少なめでした)

 


市川実日子ちゃん、萌音ちゃんのキャスティング時期は色々ネタバレと絡んでしまうので言えないとのこと。

 


音楽:大橋トリオ

もじりさんが元々好きでいつかご一緒したいと思っていた。

今回西部劇のようなドライな感じにしたかったのと、過去の大橋トリオの劇伴のイメージから是非と。

 


櫻井さん曰く、表現者というのはモテないことを原動力に表現する人と、モテる/ダンディズムを追求していく人に分かれる気がする。大橋トリオはめちゃくちゃモテる。

そういった点からも三郎との化学変化が面白いと思っている。

 


ちなみに今回もMITCHさんがトランペット指導で入っている。

カムカムでは幼い頃のジョーが見つめるトランペッター。

今回もこっそり出ていて、1話の新聞屋さんがMITCHさんなので探してみて!

 

(追記)なお、白井三郎は当初中年男性の設定だった。

しかし、今回の「若者の渇きや叫び」をテーマとした時に、平井太郎との対比を考えると、説得力のあるのはおじいちゃんだろうということで、あの設定になった。

☆衣装について

当時の知見が深く、また当時の服を持っているスタイリスト宮本まさ江さんをお呼びした。

当時は、洋装も和装も混在していたので、まずは太郎をどうするかを決めた。

その中で、三郎さんとの対比のためにも太郎は洋装ベースでとなった。

 


補足:実際の宮本さんの資料をスライドで見ながらなので、とても楽しかった!

イメージボードとして、当時のスナップのコラージュや、作成するスーツ地など。

 


美摩子のチャイナドレスも生地見本が載ってたから作りなんだなぁなどなど。

特に美摩子の衣装の写真と隆子さんの着物の合わせなどが見ていて素敵で楽しかった!

 


なお、太郎と隆子さんは当時の写真を出来る限り集めて参考にした。

 


また、今回衣装や当時の建築、部屋の様子などを制作チームのバイブルとなったのが、江戸川乱歩著「貼雑年譜

細かに記録されていることで参考になった。

 


セットの世界観や色もあるので、そういった点での見え方など自由闊達に意見を交わし合って擦り合わせて作っていった。

NHK江戸川乱歩シリーズを意識したか?

もじりさんは江戸川乱歩シリーズ見ていない!

今回の作品は江戸川乱歩の作った世界ではなく、江戸川乱歩の見た世界

乱歩の情景描写力はすごく、日本建築の研究をしていた。

そのため、赤い部屋は乱歩の小説の描写に近い。

今回は、乱歩の小説の耽美な世界を現実に落とし込むためドライに仕上げている。

 

なお、予算がなくて出来なかったけど、怪人二十面相などに出てくるガラス片や瓦を使った忍び返しもやりたかった!

 

☆探偵ロマンスのタイトル

岩井三郎をモデルに書かれた、松崎天民著:探偵ロマンスから拝借。

この時代にロマンスという言葉を使うところや、ロマンスを探偵に感じていたことに痺れた。

ちなみに大嶋さんのつけた仮タイトルは【その名はSABURO】

 

☆2話以降注目して欲しいポイント

散々アクションの話などしたが、世代間や格差社会などの

若者が叫びたいことを叫べない心の燻りを丁寧に表現したい。

特に3〜4話はアクションや大きな事件が起こる派手さはなく、人間の業、心情描写がヒリヒリしていく。

 


また帝都(東京)がテーマなのに大阪制作である面白さ。

大正時代を撮るなら関西しかない!というほど、ロケーションや建物が沢山残っている。

今回、アクションシーンや汚しのシーンも多いけれど、それいったシーンでも重要文化財で撮っているので、関西の人は特に「あの場所だ!」など楽しめると思う。

勿論、実際に重要文化財にダメージが出るような撮り方はせず、セット撮影などと混ぜてますよ!とのこと。

ちなみに、歓楽街は東映で撮影。

 


なお、関東大震災の後、乱歩は大阪の守口に引越し、そこから小説デビューしたというところもご縁かなと。

(この辺時系列曖昧かもです)

 

今回かなり手応えを感じているので、反響を届けてもらえると続編に繋がるので是非届けて欲しい!!

 

途中から編集の佐藤秀城さんご登壇

カムカムチームが信頼を置くスーパー編集マン

ちなみに神回、カムカムの第8話のアルデバランが後半で流れるあの回。

あのアイディアは佐藤さんのものだそう。

佐藤さんは編集マン故撮影現場に立ち会っていないので、俳優さんと面識がない。

故に、上がりの素材を見て冷静かつ忌憚のない意見をくれる。

 


今回は乱歩ということで黒と赤の世界なので、普通は白テロップだけど赤テロップにしてる。

このシーンの意図が見えない、とかドラマの出来を支える最後の砦となる。


☆最後に一言

佐藤秀城さん

素材の段階から感じる俳優の熱量をそのまま届けたい。

「森本君は声が良い」って!

佐藤さんめちゃくちゃプロの矜持が感じられてめちゃくちゃ格好良かった…。

 


大嶋慧さん

はじめは三郎を主役にしていたけれもど、調べていくうちにどんどん太郎が魅力的に思えてきた。

人間としての乱歩を描く作品。

 


瀨木文さん

今回の会の名前に則って、乱歩をテレビドラマにする上で、今回本当にバイブルとして、貼雑年譜を読み込みました。

ご本人は公開するつもりはなかったかもしれないけど、事細かに当時の生活を残してくれてありがとうございますとお礼を言いたいです!

 


安達もじりさん

今回、実際の乱歩さんの原稿を見て実筆に惹かれた。

それを我々は乱歩フォントと呼んでいた。

太郎が執筆するシーンがあり、手元が写るが、それは濱田さんの筆ではなく、1ヶ月かけて乱歩フォントを習得してもらって書いてもらっている。

とにかく、面白いものを世の中に届けるというエンターテイメントの精神を持つ乱歩先生に背中を押されて、こだわって作った作品です。